寺院の世襲制が始まって早150年。
お寺はそこに住む住職のものであると考えるのが一般的になっているかもしれないね。
でも、実際はどうだろう。
江戸時代以前は、僧侶は妻帯不可だったので、 「自分のこども」がいなかった。
さらに、僧侶は、寺院を転々とするもので、 長居することはあっても一生とどまるということは少なかったのだね。
この頃は有力な豪族や貴族の布施で寺院は成り立っていたので、 僧侶のものではなく、施主のものであったといえるかもしれない。
しかし、江戸時代になり、幕府がキリスト教を禁止すると、 宗門人別改帳を作り、寺院に住民の戸籍管理をさせるようになった。
ここで生まれたのが、「檀信徒」だね。
檀信徒は自分の檀那寺(だんなでら)を守る役割を持っていて、 住職が変わっても、檀信徒は変わらず、檀信徒が寺の守り人になっていった。
いつしか、僧侶も妻帯するようになり、 檀信徒とも縁が深いこともあり、 子に住職を継がせるようになった。
檀信徒もどこぞの知らない坊主がくるよりもいいと喜んだことだろう。
しかし、世襲が進むにつれ、 僧侶側にも寺の私物化の意志が強くなった。
代が変わるごとに檀家の使命感も薄れ、 いつしか「住職のもの」と思われるようになったのである。
でも、正確な言い方をすると現在のお寺は「宗教法人のもの」になるのかな。
一人の力で守れるほどお寺の維持は簡単なことではない。
もっと広く助けとなり、 助けられることで守っていくことができるのだと思うよ。
合掌